こんなに喜んでもらえるなんて。うれしかった。屋台を出せば、売れるのではないか。弁当工場を辞め、中古の軽自動車を買った。プロパンガスのコンロを載せ、幼い娘とむすこは助手席に座らせた。
「開店」したのはJR大船駅前。初日の夜、怖そうな男が近づいてきた。
「ここで店を出すな。だれに許可もらってんだ」
「お母さんが残留孤児。お金がほしいから、肉まん作る。子どももいる。貧乏だから働かないと」
とつとつと訴える雪子さんに、男は「あそこならいい」。少し離れた場所を指さして、去っていった。
一年後、大船駅近くの商店街に間口が1メートルほどの貸店舗を見つけた。屋台をやめて、餃子や肉まんの持ち帰り専門店を開いた。注文の言葉が聞き取れず、困っていると、隣の店の人が通訳をしてくれた。
しかし、持ち帰りでは冷めてしまう。いつかは、出来立てを食べてもらう店を持とうと、毎日四百個の水餃子を作り続けた。
そして、昨年十月三日。「王家菜館」がオープンした。店には二人の中国人コックがいる。だが、餃子は、いまも雪子さんが自分で作る。
「残留孤児二世の友達の中には、やりたい仕事が出来なくて苦労している人もいる。私は店を持てたし、みんなに応援してもらって幸せです」
雪子さんは、ぱっと右手を開いてみせた。
「恥ずかしいけれど、こんなにがんばったから」。小麦粉をこね、餃子の皮を伸ばしてきた親指の先は、平べったく変形していた。
こうして念願がかない、1998年10月に第1号店を上大岡にオープンし、2000年5月には本郷台店もオープンしました。
値段もお手ごろで、味にも食材にもこだわった逸品ばかりで、地元のお客様にご好評をいただいており、土曜日や日曜日にはお待たせすることもしばしばです。 |